嫌な子供。物凄く嫌な子供。
いつも刀を抱いている。講義中も食事中もあまつさえ寝るときも。
紅い眼に白銀の髪、目立つがどうにも生気が無い。茫として何処を見ている。理解し難い。
嫌な子供。分からない子供。
あの人の事を呼び捨てにする。敬意が感じられぬ。赦されぬ行為。
同年代の子供同士で遊んでいても、姿も見せず愛想も悪く。
嫌な子供。腹が立つ子供。
授業も寝ている。聞いていない。成績が芳しいとは思えない。あの人が矢鱈と構う。
長髪の幼馴染が気にしている。剣の構えがおかしい。その癖滅法強い。
嫌な子供。木の上。
「…」
「だれ?」
「お前こそ」
「ウソ。知ってるだろ?ココ最近ずっとおれの事見てた」
「み、見てなんか…!」
「そっか。じゃあ、おれの気のせい」
「…」
「ココね、景色がきれい」
「さみしくないのか」
「さみしい?」
「ひとりで。誰ともあそばないで」
サミシイ、さみしい、わからない。呟く。
小さな身に余る刀を抱きしめてさも不思議そうに。
「こっち来る?いい景色みれるよ」紅い眼に映る空の蒼。少年は顔を逸らす。
「…何で刀を持ってる」
「ん?」
「何でずっと刀を抱えてるんだ。子供の癖に、刀なんか持って親に怒られないのか」
これね、あの人から貰った。あの人って?しょーよー。…………。
嫌な子供。やっぱり嫌な子供。
20100129 恭