屋根を見上げれば、ちらりと覗く白い足。坂本はくすりと笑って、自身も上る。 「またおまんは此処か」 「…悪ィかよ」 目もくれず、顔もあげず、腕を枕に寝転ぶ白皙の面は只管闇夜を見上げ。坂本もつられて空を見上げる。黒に浮かぶ藤紫の月。 「またアレ見ちょったがか。ほんに、おんしは月見が好きじゃの〜」 「好きじゃねぇよ。つか、何さりげなく隣に座ってんだよ。もじゃもじゃはどっか行けや」 「アッハッハ、冷たいの〜」 返事は無い。紅の双眸がこちらを向く事は無い。銀時を見る坂本の目。 「───…」 暫しの沈黙の後、坂本は静かに言う。 「不思議に思いはしやーせんか」 「あ?」 「宇宙は広い。そん中で考えれば、わしらの存在なんかちっぽけなモンじゃ」 「…」 「世界はまっこと広いのう。宙見てると小さな悩みは全部ぶっ飛ぶきー」 「お前に悩みなんかあんの?」 「アッハッハー泣いてイイ?」 白髪頭はまた月に目を向け。 「何で月ってあんだろうな」 知っとるか、銀時。月は公転運動と自転運動の周期がほぼ同じじゃ。…ちゅう事は、地球からは月の裏側は見えん。月は、常に同じ向きで回っとる。その表は地球の陰になっとるから、綺麗な儘だとしても、裏側の方が隕石の衝突を受ける事になる。わしらからは見えん月の裏側は傷ついて。それでも月は太陽の光を受けて、懸命にその裏側を隠しながら輝いとる。 「…何?公転?ワケわかんねーんだけど」
自分は太陽になりたい。
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星の数ほど男はあれど 月と見るのは主ばかり