篝火揺ら揺ら
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俺が隣に居ないと。 「…其れは御前も同じ事だろう、高杉」
行くなと止めた。奴は狂っている。正気の沙汰では無い、だから行くなと。 「よォ、シケた面してんなぁヅラ」 「…何故」
白銀の刃に血は好く映える。 だから男はこの色を背負って生まれてきた。 だからこの男はこの色を着ている。 だからこの男の双眸は血の色をしている。
篝火揺ら揺ら
夜に眼が醒めた。
何故帰って来た。 なぁに云ってんだ、俺が帰ったら泣く癖に 化け物風情が クク、俺に夜叉になれって云ったのは、一体何処の誰だったっけ?何怒ってんの
手前には一生解らねェ理由でだ
そうして組んず解れず上になり下になり縺れ合う二つの影。幽玄の月光を照り返す硬質な白銀が、微かな笑声に震えた。響く艶かしい吐息。桂は耐えられずにその場を静かに後にする。
泣いているのは誰だ。 何かを問えば必ず答えを返してくれる人が居た。今は居ない。声だけが耳に錆付いて離れぬ。ただ此れは誰の声だ?
笑 い 声
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切れて呉れなら切れても遣ろう 逢わぬ昔にして返せ