わーっ雪だ雪! 「本当だ。久しぶりですね、雪は。綺麗に積もっている」 一斉にはしゃぎ出す子供たちを見て、松陽は微笑む。曇天の空から雪が降る。美しい景色に、寒さをも忘れる心地がする。 高杉が、いの一番に走っていって、にししと笑いながら早速雪玉を作り始めた。 「おーいヅラ、雪合戦しようぜ!」 「ヅラじゃない、桂だ。…何を云うか、俺は雪だるまを作るのだ。雪合戦などとガキ臭い遊びは、俺はもう卒業したのだ」 「何いってんだよ、オマエそんなんだからヅラなんだぜ」 「ヅラじゃない、桂だ…おぶっ!何をする!いだだだだ、ちょ、タンマだタンマ!」 先手必勝とばかりに、高杉がもう雪玉を投げ始めた。一方的に当てられる桂は痛そうだ。おのれ〜高杉ィィ!!メラメラと復讐の炎を燃やし、せっせと雪玉を製造し始めた桂を見て、松陽は苦笑い。 銀時は、一人で路傍にしゃがみこんでいる。
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路傍の笹。 雪を載せて震えている。 銀時は微笑み、買い物袋を持ったまま、その前にしゃがみこんで、呟く。 「…頑張ってんな、同志」 前を行く新八と神楽が振り向いた。 「え?何か言いました、銀さん」 「何でもねぇよ」 「とうとうアルツハイマーアルか、銀ちゃん」 「ちげーよ」神楽の頭をパコンと叩く。 神楽の石頭には何のダメージも無いらしく、彼女はニヤニヤ笑っている。 「フフーン、どうだか。さ、アルツハイマーと疑われたくなかったら私を背負うヨロシ」 「や、ワケ分かんないから!アルツハイマーとお前の間には何の関係もないからねソレ!てか、お前が単におぶって欲しいだけだよねソレ!」 「だって疲れたアル、足痛いし」 「僕も足痛いです。だって昨日の仕事ハード過ぎましたよ、アレ」 「ハイハイ、もーうっさいお前ら!俺ァ絶対おんぶなんかしねーからな、だって重いもんお前ら!てか二人合わせたらもう百キロ近いだろ、無理だってそれおんぶとか!」 「グダグダ抜かさないでさっさとおんぶしろヨこの腐れ天パ」 「うっさいのはアンタですよ、この糖尿ダメ人間」 「何?何なの?キミたち、反抗期なの?」 問答無用、とばかりに新八がまず背中にタックルし、その上に更に神楽が圧し掛かる。ぐぼぉと悲鳴をあげ地面に倒れ伏した銀時は当然ながら一歩も動けない。 ちょ、待…重い重い重い!死ぬ!何か出る、内臓的なモノが! 「あ、神楽ちゃん、ダメじゃん買い物袋までぶん投げたら!」 「間違えたネ」 「あーあーアレ、卵割れちゃってるよ、多分。当分卵かけご飯なしになっちゃうよ、アレ」 「マジでか!オーマイガッ失敗したヨォォォ!」 オーイ、チミ達、そんな会話しないでさぁ、どこうよ。銀サンマジで死んじゃうよ?
笹と眼が合う。銀時は笑う。
見てるか。俺、必死に生きてるよ。
「…ちょっとちょっと、銀さん、何ニヤニヤしてんすか。気色悪いですよ、さっきから。独り言は言うし」
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腰が曲がろが ふらふらしようが