「あの〜…」 街に用があって出てきて帰って来た。途端に眼前に広がる光景。予想だにせぬ。 「おんしらぁ、何やっとるがか?」 「見れば分かるだろう、坂本。餅を作っている」 桂が木臼の中の其れを捏ねながら答え、この真冬の厳寒にも構わず肌脱ぎになった高杉はせっせと杵を振り下ろしている。…いやいや、そうじゃなくて。 「珍しい組み合わせじゃの〜…ヅラと高杉のペアとは」「俺だって好きでやってる訳じゃねぇよ」と、高杉。「何を云うか、俺だって新年会の事が無ければ誰が貴様と等」と、桂。バチバチ、火花が飛ぶ。無言の高杉が、杵を振り下ろすタイミングをずらし、思いっきり木臼に杵をドゴォォォっと叩き付けた。 「悪ィ、手ェ滑った」 「……」 案の定、下敷きになった桂の手が痛々しいまでに真赤に腫れている。内出血もいい所である。…凄い音したき〜、骨折れてるんがないろうか、今のは…と坂本は微妙な顔で笑みを形作る。 桂の真赤に腫れあがったその手を見て、フフンと鼻を鳴らし、ざまぁみやがれ、とばかりに哂う高杉。その瞬間、熱々の餅が一つまみ凄い勢いで高杉の顔面にビチャアアアアっとブン投げられる。桂の仕返しである。飄々とこう云う。 「すまん、手が滑った」 「……」 …熱々の餅、あ〜あ〜こがーにべったりついて、火傷が…それより、アレ、目に入ったがやないろうか…とやっぱり坂本の乾いた笑い。そんでもって、顔にべったりついた餅をびちゃりと投げ捨て、高杉はクククと哂い、ギン、と凄惨な予感を滲ませる凄まじい笑顔。 「上等だぜ、ヅラァ…」 「ヅラじゃない、桂だァァァァ!!」桂のシャウトをゴングにし、二人の乱闘が始まった。杵を打ち下ろす高杉、対する桂は木臼を盾にしてそれを防ぐ。そして餅を掴みそれを武器に投げる。 「ふざけんじゃねぇぞヅラ風情が!ヅラはヅラらしく大人しくヅラ被ってろ!」 「ヅラじゃない桂だァァァ!貴様はもう失明しろ!餅が目に入って失明しろォォォ!」 …ていうか、おまんら、餅つきはどおした。餅、全部床に落ちゆうけど。駄目になっちゅうけど。 「あー何してんの、二人とも。それよりさ〜相談あんだけど」 声に振り返ると、白髪がぼけ〜っと佇んでいる。 「おお、いいところに来ちゅうね、金時!お願いやき〜、あの二人止めとおせ〜わしじゃあどうにもならん」 「金時じゃねぇっつってんだろ、銀時だ銀時。それよりさあ、アンコ作ってたら味見に夢中になっちゃって全部無くなっちゃったんだよね〜コレ、参ったな〜やっちゃったな〜どうするよ…って、聞いちゃいねぇなあいつら」 そう嘆息する白髪は、今度は床に落ちまくった餅の数々を見て、「オイオイ、食べ物粗末にすんなよ〜ったくよ〜」とか云いながら、其れを食べようとするのである。 「おまん、止めやぁ!ほがなもの食ったら病気になるがでよ!」 「るせーよ毛玉ァ、黙ってろや」 もう笑うしかない。アッハッハ、何コレ、いじめ? そんでもって、その内流れ弾ならぬ流れ餅が当たり流れ杵が当たり、白髪もブチ切れ乱闘に参加する事となるのである。アッハッハ〜生きるのって辛いきね〜!!アッハッハ! |
鬼が餅つきゃ閻魔がこねる そばで御地蔵がなめたがる