「はぁ?添い寝だぁ?バカじゃねーの、気色悪い」
「オイ、たつまァ。パフェ奢れ。街行くぞ」
「モジャモジャは星へ帰れ、バーカバーカ」

 …星って、何処へ。

 

 

「ちょっと、オタクの屯所で寝かしてくんない?ウチ神楽が今大暴れで…グスッグスッ…(嘘泣き)あ、ちなみに君に拒否権はないんで宜しく(笑顔)」
「お〜いいトコに来た土方クン!団子奢れや」
「マヨネーズヤローは消えろ!バーカバーカ」

 糖分ヤローに言われたくねぇよバーカバーカ!

 

 

 

 

 

「アッハッハッハ!そそっかしい奴じゃの〜だから金時じゃ、金時」
「…『ぎ』じゃなくて?銀時じゃなくて?」
「アッハッハー違う違う、『き』じゃ、『き』!全くそそっかしい奴じゃの〜アッハッハ」
 今まで応対していた沖田も、ついにそこで嫌そうな顔を見せた。無言で部屋を出、土方を呼びに行く。
「土方さん、タッチ」
 書類片手に廊下を歩いていたのに、急に後ろから首を締め上げられ土方は咳き込む。振り払って振り返り怒鳴った。
「テメッ総悟ォォォォォ!!いきなり首絞める奴があるかァァァァ何がタッチだァァァ!!!」
「玄関に変な奴来てて、手に負えねぇや。だから交代ってコトで。見廻り行ってきやーす」
「はぁぁぁ?!や、ちょっと待てコラ!総悟ォォォォ!」
 暴走ドS王子は土方の制止にも止まらず(いつもの事だが)、そのまま廊下を走って見えなくなる。

 …玄関に変な奴だァ?総悟が手に負えない?

 そもそも、沖田の説明は不十分すぎる。というか初めから土方に説明する気がない。

 とりあえず床に散らばった書類を掻き集め、部屋に隠してから、玄関へ向かった。そこに居たのは、下駄、赤のド派手な羽織、サングラスかけた男。そして、髪の毛がうねっている。天然パーマか。そこでまた別の存在を思い出し、土方の目つきが思わず鋭くなる。
「…何の用だ。ここは武装警察真選組屯所だが」
「アッハッハーアレ、君、大串くん?おー懐かしいのう!」
「誰だソレは。俺は土方だ」
「おー改名したがか!大串くん」
「話聞けやァァァ!だから土方だっつってんだろ!」
 …この話の聞かなさ具合、やっぱり誰かを思い出す。引き攣る顔を隠しもせず、土方は問う。
「…んで、何の用だって聞いてんだが」
「おお、とある友人の家へ行きたいんじゃが、江戸はまっこと広いきねぇ、迷ったぜよ〜アッハッハ」
「あのな、ココ、警察は警察でも、武装警察なんだよ。対テロリストの特殊機構なワケ。道案内頼むんなら、普通の警察んトコ行きな。ソコの角曲がった所にすぐ交番が有るぜ」
「アッハッハーそうかそうか!そりゃありがたいの〜」
 と言って、男は何故か屯所の廊下を直進し、突き当たりの角を曲がる。
「ソコじゃねぇぇぇぇぇ!!ソコじゃねぇからァァァァ!!」と土方がズンズン進む男を羽交い絞めにする。
「え?違うがか?」
「角は角でも違うからァァァ!外だからァァァ!バカじゃねーの、何で屯所ん中に交番があるんだよ!」
「アッハッハ〜江戸は広いきねぇ、ついつい迷ったぜよ」
「や、江戸の広さと関係ねぇだろ!お前ただのバカだろ!バカなんだろ!」
 …何かやっぱりデジャヴを感じずにはいられない土方である。このバカさ加減、アイツといい勝負かもしれない…
 土方が遠い目をする。その横で、男はまじまじと土方を見ていた。
「…おんし、わしの知り合いに似ちょるなぁ。目元とか」
「あ?」
「似とる似とる。煙管は吸わないがか?」
 …何言ってんだ、コイツ。土方がうんざりしているのにも関わらず、男はなおも喋り続ける。
「喋り方とか雰囲気も、わしの知り合いに似ちょる。また別の知り合いじゃが」
「…や、もうどうでもいいから帰ってくれ、迷うんじゃねーぞ、屯所出たら右に向かって真っ直ぐ、そして突き当たりを左」
「そんでもって、おんしには何だか妙な親近感を感じる。おんし、人によくタカられたりとかせんか」
「…」
 ホワホワホワ〜ン。出てきたのは、あの銀髪頭。
 ───ダメだ、頭痛くなってきた。
「好い加減にしろ、もう話終わりな、終わり。終わり。分かったら出てけ」土方は言って、男を引き摺り倒し、そのままぽいっと屯所の外に捨てる。
 アッハッハー、大串くんは力強いきね〜アッハッh
 バターン、扉まで閉める。

 …手ごわい敵だった。すんげー疲れた。
 げっそりした顔で廊下を歩き、隠していた書類を手にする土方の動きが、そこでぴたりと止まる。

 …アレ、ちょっと待てよ、大串って名前、何か聞いた事あるな…思い出せねぇ。ま、いいか。思い出せねぇって事は、大して重要な事でもねぇんだろうからな。

 

 

 

寝ればつんつん座れば無心 立てば後ろで舌を出す