飲み屋で偶然会った。ここ最近御無沙汰していた。任務が立て続きで多忙の日々が続いていた。

 久しぶりだなぁ、と赤い顔して微笑みかける顔。もう相当酔っている。だから自分も酔って遣ろうと思った。

 夜は更ける。年々時間が経つのが早くなってゆく。春かと思えば夏、夏と思えば秋、秋と思えば冬、冬と思えば一年は終り。
 という話をしたならば、白髪は笑って、そりゃ万物普遍の法則だ、どうしたよ、豪く感傷的だなぁ。これは酔っている所為だ、と答えた。夜は冷える、だから酒を呷る。だから酔う。御前が酔っているのに、一人素面じゃどうにもおかしいじゃないか。酔っ払いに対抗するにはコレしかない。飲み比べもいつもの事だろう。

 白髪はどうでもいい話ばかりする。何時もは其れで満足している筈なのに、今日は何か物足りないと感じる自分が居る。目線の先。平生目立たない癖にこうしてみると長い睫。覗く鎖骨。白い肌はきっと吸い付けばすぐに鮮やかな華を咲かすだろう。
 ───おんなと御無沙汰な訳では無い。ただ、興味が無い。のめり込む暇があれば只管公務、別に不満がある訳でも無い。総て自分が選んだ道。夢がある。真選組を大きくする夢。大切な大将を護る夢。

 ハナシ、聞いているのか、と聞く白髪は怒ってぎゃんぎゃん喚いているが、そうすると自分は少し上の空だったらしい。聞いてる聞いてる、バッチリ、適当に生返事を繰り返すと更に喚き出す声、五月蝿い。塞げばどうなるだろうか、頭の片隅で考えた。口で塞いでやるのだ。舌で歯列をなぞってやる。おんなとは縁の無さそうなこの男はどういう反応を返すか。きっと為す術も無い。
 …ストップをかける。まずいまずい、妄想が変な方向に。

 最後におんなを抱いたのはいつだ。欲求不満なのか、俺は。

 いけ好かない男の筈。俺はコイツの事が大嫌いな筈。何だって、こんなゴツい男相手に…

 次、飲みに行くぞ、と白髪。まだ飲む気か、へへーん今日は御前の奢りだもんね、…誰が奢るっつった、や、俺が決めた、…絶句。
 振り返る白髪と眼が合う。柔らかい微笑に眼を奪われる。そして男はこう云う。
 俺を放っといた罰だよ、罰。だから土方クンの奢りね。次何時会えるかも分かんねーんだからさ、だって御前いつおっ死ぬとも分かんねーじゃん?
 そりゃこっちの台詞だ、バカが。衝動的に駆け寄って、力任せに。
「…土方?」
 腕の中の怪訝な声には聞こえない振り。
 …全部、酔ってる所為だ。酔っている所為。

 

 

 

 

 

 

 

次は何時かと問う君の目に 答えられずに抱きしめる