ひとごろし。ひとごろし。女はそう叫んでいた。どうして助けてくれなかったの。どうしてあの人を助けてくれなかったの。あなた達が指揮していたならどうしてあの人を殺したの。そうよ、あんたが殺したのよ。このひとごろし。女の力はひどくか弱く、胸板をたたかれても自分の体はびくともしなかった。ただ酷く疲れきっていた。
女を力で捻じ伏せる。頤は細く握り潰したら破裂してしまいそうなほど。振り乱した髪の毛にも艶がなく、みすぼらしさが彼女の生活を物語っている。興奮はしなかったが後ろから突き刺してやった。狂乱は嗚咽に変わりすすり泣きに変わるまでに時間は然程はかからなかった。人は本能や無意識には勝てない。意識の表層や理性などいっその事粉々に砕いてやればいい。
痙攣する浅黒く細い裸体を見ながら、白くしなやかな裸体を考える。そうして男は目の前の女でさえ綺麗に抹殺してみせる。
ひとごろし…ひとごろし…女の口癖が移っていた。さあっと顔色が変わったのを見てようやっとそれに気づく。───なに物騒な事を、言いかけた唇を塞ぐ。興奮はしたものの只管に憐れ!嗚!
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