両目は赤く、尖っているというから、てっきり化け物か何かの類だと思ったのに出てきたのは何の事は無い、ただのしがない男。それも目が死んでおり生気が無く青白い肌をしている。気味が悪い、とだから思ったのだ。いや、尖ってなぞ居ない。どうしてそう思ったのか分からない。眠そうな目でとろんと澱み垂れている。「報酬しだいでは何でもします」といった類の事を言うのだから、馬鹿じゃないのかと思って何だか悲しくなるやら。否、否、否、待て、同情?自分にするべきだ。 何故目が死んでいるのか考える。 「煙草。吸わせて」「煩い」「吝嗇だねぇ、んとに鬼の副長さんは」「黙ってろ」俺は悪くない。この男が、「報酬しだいでは何でもします」と云うのだから、オフザケ興味本位で提案したら、あっさり首を縦に振るから。俺の所為じゃない。此れは只の暇潰し。奴にとっては仕事。今日は非番、暇、だから。だから、だから、俺は悪くない。「じゃあ御奉仕しますよオキャクサマ」そういう男はぺろりと唇を舐めて。俺は悪くない。此奴の唇が赤いから目が赤いから肌が白いから、絶対に跪こうとしないから、「ちゃんとゴムつけてね、妊娠したら大変デショ」呆れて物も言えぬ、そして舌がぬるりと滑り込んできたから余計に喋られぬ、耳を齧った。わざとらしく男は声を上げ、嗚でもやっぱり耳は尖っているのかもしれないじゃあ奴はやっぱり人間じゃないのかもしれない両目は赤く、
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