「銀ちゃーん」
「銀ちゃんですけど、何か」
「今日、何日だっけ?」
「今日は三月十四日ですけど、何か」
「って事は、今日何の日だっけ?」
「いよかんが特売品の日ですけど、何か」

 ゴッ!!っと、神楽のアッパー。

「ぐほぉぉぉぉぉ!!おま、何すんの、いきなり!舌噛んじゃったじゃん!」
「ホワイトデーアルヨ、ホワイトデー!!わかったらさっさとお返し買って来いや、ダメ人間が!ホールケーキ三個分!ダメなら板チョコ百枚!」
「それ一人で食べる気ィィィィ?!てか十倍返しにも程があんだろーが!んな金ねーし!」
「じゃあ、作りゃあいいんじゃないですか、ケーキ。アンタ、ホールケーキ作んの得意でしょ…って、神楽ちゃん…?」
と口を挟む新八に、ゆらりと神楽の魔の手が忍び寄る。「何のんびり傍観者ぶってるアルカ、オメーもさっさとお返しもってこいやダメガネがァァァ」「ぎゃああああああ!!!」
 新八のやられっぷりを見ながら、銀時は乾いた笑顔をぴくぴく痙攣させた。
 …やべーな、コレ、マジでお返しやんねーと俺殺されんじゃん、マジ。
 ホールケーキ三個を買うのはツライ。なら作った方が手間はかかるもののまだ安上がりだ。
「あ、ツッキーとさっちゃんとアネゴにもちゃんと作れヨ、銀ちゃん。それとあのマヨ男にも」
 銀時がおもっくそ顔を顰めた。
「…アイツは…いいよ、面倒臭い。てかキショイ、てか何でアイツなの」
「何言ってるアルカ、バレンタインの次の日かなんかに、マヨ名義でどっさりチョコ送られてきたの、私覚えてるヨ。さてはコレか、まさかデキてんのか、お前ら、いい年した男同士で。おまわりさんんンンン ここに変態一丁アルゥゥゥゥゥ!!!」
「何ですって、変態ですってェェェ?!おのれ、銀サンに近づく変態メスブタは私一人で十分よ!成敗してくれる!」
 さっちゃん。神楽が叫んだ瞬間に、天井からシュタっと下りてきて、クナイ構えてキョロキョロしている。無言の沈黙の後、銀時がさっちゃんを蹴り飛ばした。
「どっから出てきてんだテメーは。成敗してくれる、じゃねーよ。お前を成敗してやろうか」
「ああっいいキック!もっと強く!もっと激しく!」
 きゃーきゃー煩悶するさっちゃんをズルズル玄関まで引きずって、ドアの外に放り投げ扉を閉め鍵を閉め、銀時はふぅっと息を吐く。何事かを立派に成し遂げた時のような、すがすがしい顔である。
「よし、一人目お返し完了、と。あと三人か、先は長いな」
「先は長いな、じゃねぇからァァァァ!!何すか、今の!アンタただS行為働いただけだろうが!どこがお返しなんすか、アレ!」
「アレ、もう新八復活したの?はえーな、じゃあお前、自分の姉貴担当な。適当にバナナでも持ってきな、怪力暴力メスゴリラの好物確かバナナだろ」
「いい加減にしろォォォォ」
「よし、ともかく材料買ってくるわ。留守番よろしく」
 出た、銀時の十八番、無茶ぶり、話聞かない、そのまま暴走。新八は神楽に殴られて歪み切った本体(=眼鏡)を抑えながら、溜息。

 

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