「すんませーん、月詠サンいらっしゃいますかぁ〜」

 ひょこり、と覗かせた顔に、日輪が笑顔を輝かせた。
「あら、銀さん!月詠なら外見廻りに行ってるわよ」
「そうかい、じゃあ探してみるわ」
 銀時が身体を反転させると、そこには月詠の姿が。いつもの煙管をふかし、佇んでいる。
「…何の用じゃ」
「あ、丁度いい所に。アレだよアレ、ホワイトデー。作ってやったから食べな」
 月詠が途端に顔を逸らした。斜め下を見、気まずそうな顔を僅かに紅潮させている。
「わ、わっちは、ぬしにお返しをされるような事はした覚えはない」
「バレンタイン、チョコ送ってくれたじゃん」
「…送っとらん」
「しかもパイ投げの要領で顔面投げつけてくれたじゃん、アレ糞痛かったんだけども」
「…」黙り込む月詠。その顔は益々紅潮する。
「ハイハイ、そうとなったら食べようぜ、おーい日輪さんよ、皿とナイフとフォークってどこにある?」
 向こうの棚に入ってるわよ、と返す日輪の顔は笑顔だ。いそいそと部屋の奥に消えた銀時、その隙に月詠が、笑顔を湛えている日輪をきっと睨む。
「……日輪……」
「良かったわね、久しぶりに会えたんでしょ?」
 そう返す日輪は確信犯である。

 

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