甘いモンは好かん、と渋るのを無視し、切り分けてやったソレを無理矢理食べさせると、今度は暫しの沈黙の後「…不味くはない」という可愛げのない一言が返ってきて、銀時は首を傾げる。
「…あのな、ウマイって素直に言えや、ウマイって」
「だから、わっちは甘いモンは好かんと言うとるだろうが」
「ケッ 可愛げのね〜女ぁ〜」
 月詠は無視して、ケーキを口に運んでいる。


日輪は晴太と共に、席を外している。「アラ、ちょっと用事思い出しちゃったわ、というワケで私ちょっと出てくるわね。お二人でごゆっくり〜」と意味深な笑顔で言い、晴太に車椅子を押して貰って。月詠は珍しくうろたえた様子で日輪を懸命に引きとめようとしていたが、結局ココに残り、銀時の真正面でケーキを一心に食べている。
「黙々と食ってっけど。お前ホントはケーキ好きなんだろ?」
「何度も言わせるな。好かん」
「じゃあ何でそんな懸命に食べまくってんのよ。ホラ、正直に言えや、ウマイんだろ?」
 月詠がそこで初めて視線を上げた。
「…本当に、ぬしが作ったのか」
「あ?そうだけど」
「そうか」
「なによ。そんな何遍も聞くほど意外?」
「ああ。そもそも、男が洋菓子作りなどと…」
「いいじゃん別にぃ〜。言っとくがな、俺こう見えても料理全般得意だから。そん中でも飛びぬけて甘味はプロ級だから」
 胸を張る銀時。月詠は微妙な顔をしているのを見かねて、更に白髪頭は言う。
「そういうオメーはどうなのよ。料理とか作れんの?」
 案の定、無言が返ってきた。銀時が噴出し、月詠がじとりとねめつけた。
「…何がおかしい。わっちには吉原を護る役目がある。故、料理等というものにウツツを抜かしている暇なぞない」
「やーダメだって、そりゃあよ。女の子なら料理の一つくらい覚えんと」
「女扱いするな」
 月詠の剣幕も意に介せぬ様子で、銀時は頬杖をつき、にこりと笑顔の儘こう言った。「何なら、俺が教えてやろうか。銀サンの出張お料理教室って事で」
「よ、余計なお世話じゃ」苦々しく吐き捨てるように言った月詠の顔は、少し赤い。
「出来ねーより出来た方がいいだろ。んな意地張ってたら好きな男にも逃げられんぞ」
「それこそ余計なお世話じゃ!ぬし、もう帰れ!」
「…何怒ってんの?」
 バカである。

 

 

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