並んで歩く二人の頭上に、星が光っている。銀時が宙を見上げ、何が嬉しいのか声を弾ませた。
「あ、一番星みーっけ」
「ガキか」
「いいんだよ、男は永遠にジャンプ世代なんだよ、心は」
「…ぬしという男がわっちには分からん」
 もうすっかり日は暮れ、夜空に月が架かっていた。
「つか、見送りなんざ要らねーよ。帰んな」
「たかが小さなチョコ一枚に、ああも豪勢なお返しをされては気がひける。せめて見送りぐらいはさせてくれ」
「いいって。女が身体冷やすモンじゃねぇよ」
「だから、女扱いするなと言っておろう」
 うんざり答えた月詠の横で、銀時の歩が止まった。その瞳は、驚いたように僅かに見開かれ、前を見据えている。月詠も追って、前に視線をやると、そこには一人の男が佇んでいた。黒髪、煙草を咥え、切れ長の双眸は静かに銀時を見ている。
「知り合いか?銀時」
「…や、知り合いでもねーな、ただの気色悪いマヨネーズヤローっつうか」
 銀時の説明は歯切れが悪く意味が分からないが、とにかく知り合いというならば、席を外した方が好いだろう。
「そうか。じゃあわっちは帰るぞ」
「…や、帰って欲しくないような…」
 この男には珍しく弱気発言である。何かヤな予感する、とのたまい、笑顔を引き攣らせている。「とにかく、わっちは帰る。美味しいケーキを有難うございんした」そうして、後には黒髪の男と、白髪頭だけが残される。

 

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