〜前回までのあらすじ〜
坂本と桂の悪ノリによってアヤシイクスリをぶっかけられ、水をかぶると女になりお湯をかぶると男に戻るという摩訶不思議な変態体質になってしまった銀時!どどどどうすんだァァァと慌てる銀時をよそに、万事屋面々・妙・元凶どもはワ〜スゴーイとしみじみ感嘆、面白がってゲラゲラ笑いペタペタあーんなトコやらこーんなとこ触ってくる…というワケで銀時は自らの危険(色んなイミで)を感じ取り脱走を試みるも全て失敗、そして今こうして街に連れ出されブラジャーとパンティー+きゃーわーうぃーうぃー服を買ってやろうという妙と坂本の陰謀に嵌っているワケである!このままじゃ一生女の姿で弄ばれる運命だぞ、負けるな銀時!攘夷がJOY!JOYが攘夷!日本の夜明けは近ゴブファァァァァァァァ!!!
「何ナレーターやってんだテメェェェェざけんじゃねぇぇぇ」
銀時の飛び蹴りがゴパンと桂の顔面にクリーンヒットし、桂が血を吐きながら沈む。銀時の機嫌は今や最悪、それもそのはず、今の銀時の姿、アレである。物凄いのである。フリフリの黒フリルが随所に散りばめられた超ミニの着物。それも色がショッキングピンク。ショッキングピンクのミニである。黒フリルのショッキングピンクのミニ。AV女優が着てそうなアレである。
「ホラホラ暴れない。次はコレ試着してみてくれないかしら〜?」
妙が次に笑顔で持ってきたのはゴスロリ風味着物、「九ちゃんに似合いそうだなって思ってたヤツなんだけど、この分なら銀さんにもぴったりだと思うわ〜ウフフ」神楽が持ってきたのはキワドイスリットが入ったチャイナ服、「銀ちゃんコレどーよ、セクシースリットで悩殺アル!」坂本が持ってきたのは「アッハッハー次は下着じゃァ!わしの見立てじゃあおんしのおっぱいはF…いや、Gカップも夢がやない!ホレホレ金時、そうと決まれば早速コレを…」銀時の鉄拳、ゴパンと坂本が鼻血を出して倒れる。
まぁ、場所が場所であった。大型衣服販売店である。連れ込まれたこの店で、あれやこれやと試着の嵐、果ての見えない闘争に銀時はもう疲れきっている。というかもう夕方である。
仕方なく項垂れ、血も涙も無い野次馬たちから試着品の数々を受け取る銀時、…だが、彼は決して諦めたわけではなかった。まだその目には魂が宿っていた。スキあらばここから脱走、そしてお湯を得て男の姿に戻る。こう彼は静かに決心していたのである。
試着は大勢の目から離れ一人になれるチャンスである。だからこそ、しおらしく(※坂本をブン殴った事はもう銀時の記憶から消えうせている)彼らの要求を呑むふりをし、大人しくしているのである。恐らくチャンスは一回のみ。失敗すれば大いなる暴力神・妙と神楽の制裁が待ち受けているに違いあるまい。そうなれば監視の目も自然と厳しくなる。
だからこそ、今着ているこの黒フリルショッキングピンク着物、この一回目の試着を黙って受け入れたのである。一回言う事を聞いたならば二回目も大丈夫だろうと奴等は油断しきっているに違いない、その為にこの銀時にとって恥辱極まりない衣装を黙って彼は受け入れたのである。全ては成功のため、その為には彼は攘夷戦争時と同じく心を凍てつかせ鬼に戻る事すら厭わないのであった。
「…じゃあ試着行ってくらァ」
ブツブツ文句を言うフリをして両手いっぱいに抱えた衣装をそのままに試着室に消えようとする銀時、───ここで決めなければならない。幸い神楽は遠くのコーナーまで目ぼしい衣装を探しに行っているらしく、桂も今は先ほどのツッコミで伸びている、坂本はアッハッハ〜鼻血が止まらんぜよ〜と遠くのベンチで小休憩中、新八はトイレに行っているらしい。チャンスである。何としてもここで決めなければならない。さもなければ地獄が待構えている。
自然な態度で試着室に入った銀時、だがその手をガッと掴む者がいる。…唯一この状況によって留意しなければならない人物、妙である。
「待ちなさい、銀さん」
低い声。
(…勘づかれたか?!?!)
たらたら汗が流れ心臓がバクバク言い顔は引き攣る。
妙の唇が開かれた。真摯な顔、珍しく笑顔を絶やしている。怒気が滲み出ているようにも見える。
「銀さん、…何か忘れていないかしら?」
「な、なななな何をでしょうか」
「よく思い出してみて。私達が何を求めてるかを」
「な、なななな何をでしょうか」
間近の黒い瞳は銀時をじっと見た。目線が近い為にいつもより数十倍凄味がある。ヤバイヤバイコレ絶対脱走気づかれたと銀時がガクブル震え始める頃、
「ホラ、下着よ、下着。ブラジャーとパンティーの試着、これもしてくれないと困るわ」
(何だよォォォォソッチかよォォォォ!!ドキドキさせやがってふざけんなァァァァ!!!)
銀時の心中でのツッコミである。拍子抜けである。
「幸い坂本さんが選んでくれたものがあるから、コレ着けてみて頂戴。サイズ合わないようなら言って下さい」
「ハイハイどーもすいませんね、じゃあ試着しますよやりゃーいいんでしょやりゃー」投げやりな台詞である。だが、ぽんっと手を叩きながら放たれた次の妙の言葉に銀時はぎゃふんと言わされるハメになるのである。
「あ、そうだ。どうせ買うならセミオーダーブラの方がいいかしらね。ブラ試着の前に採寸しちゃいましょうか」
どっかーん。銀時の後ろで雷が落ち採寸の文字がテカテカ点滅しながら火山が大爆発する背景効果。
「…………………ハィィ?」銀時が微妙な笑顔で聞き返す。
「だから、採寸よ」
「…サムスン?」「それは大手電気メーカー」
「…ダイソン?」「それは吸引力の変わらないただ一つの掃除機」
ふざけないで頂戴、採寸は採寸よ。
……………採寸って採寸って、採寸ってアレ?なんかカップとかアレコレそのあの測っちゃうやつ?
「…服着たまま測るよね?」
「何言ってるの。服の上からじゃ誤差が出てちゃんとした計測結果が得られないじゃない。裸よ裸」
どっかーん。銀時の後ろで雷が落ち裸の文字がテカテカ点滅しながら火山が大爆発する背景効果。
「冗談じゃねェェェェなんで裸になんなきゃなんねーんだァァァァ!!!」
「だから採寸の為だって言ってるじゃない。あ、店員さーん、この方の採寸して頂けるかしら〜?」ハイ、と返事をして女性店員がメジャーを持って近づいてくる。銀時はわなわな震え、叫んだ。
「だから何が悲しゅうて女の前でトップレスになんなきゃなんねーんだァァァァ!!!」「あ、ちょっと待ちなさい銀さん!」
耐え切れず走り出す銀時、妙の制止の声も聞こえないフリで全速力で店を出た。後から追ってくる気配にも怯まずに走る走る走る!!つか走らなきゃ殺される!!必死である!!
「待てェェェェ待ちやがれェェェェ!!!殺すぞゴルァァァ!!!」
後ろから聞こえる鬼のような声は恐らく妙のものだろうが銀時はのんびり声の主を判別する余裕等既に持ち合わせていない。片手にいつも来ている衣装を抱えながら、ミニスカでばっちり下に穿いているトランクスがチラチラ見え隠れし通行人がギョっと目を剥いているのも構わず走る走る。捕まったら地獄に決まっていた。
そして分かれ道に差し掛かりキキキーッと銀時は急ブレーキ。
「…どの道に進みゃあいいんだ?!」
さあどの道を選択するべきでしょうか。
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