都都逸

諦めましたよ如何(どう)諦めた 諦められぬと諦めた(桂)

梅も嫌いよ 桜も厭よ ももとももとの(あい)が良い(高杉)

浮気鶯 梅をば焦らし (わざ)と隣の桃に啼く(高杉)

ちらりちらりと 降る雪さえも 積もり積もりて深くなる

恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす(ミツバ)

切れて呉れなら切れても遣ろう 逢わぬ昔にして返せ(桂)

面白いときゃ御前と二人 苦労するときゃわしゃ独り

赤い顔してお酒を飲んで 今朝の勘定で青くなる(長谷川)

お酒は飲みたい 酒屋は遠い 買いにゃ行けるが 銭が無い(銀時)

教えず習わず覚えるものは まんま食うのと色の道

重くなるとも持つ手は二人 傘に降れ降れ夜の雪(土方)

帰しともないお方は帰り 散らしともない花は散る(沖田・銀時)

腰が曲がろが ふらふらしようが ()わりゃピンと立つ 笹の雪(銀時)

旦那の忘れた煙管で下女の 部屋から火の手が燃え上がる

お酒飲む人花なら蕾 今日も咲け咲け明日も酒

次は何時かと問う君の目に 答えられずに抱きしめる(土方)

とっくに他人じゃないふたァりを世間が他人にさせておく

浮き名高砂 昔となりて 今じゃ互いに共白髪

とめて好かったあの儘帰しゃどっかで濡れてる通リ雨(土方)

握る手元の温みがまわり 解けて嬉しい雪の肌

二十五までは親兄弟に 後はあなたにやる命(高杉)

二世も三世も添おうと言わぬ 此の世で添えさえすれば好い

御前死んでも寺へはやらぬ 焼いて粉にして酒で飲む(高杉)

飲んで忘れるつもりの酒が 想い募らす春の雨(銀時)

およそ世間にせつないものは 惚れた三字に 義理の二字

御前正宗わしゃ錆び刀 御前切れてもわしゃ切れぬ

どうせ互いの身は錆び刀 切るに切られぬ腐れ縁

鬼が餅つきゃ閻魔がこねる そばで御地蔵がなめたがる(坂本)

顔見りゃ苦労を忘れるような 人がありゃこそ苦労する(松陽)

君は野に咲くあざみの花よ 見ればやさしや寄れば刺す(近藤・土方)

金の屏風に墨絵の牡丹 中に二人の狂い獅子(高杉)

愚痴も謂うまい悋気(りんき)もせまい 人の好く人持つ苦労(夜兎三人)

(こい)という字を分析すれば 糸し糸しと言う心

これほど惚れたる素振りをするに あんな悟りの悪い人(銀時・高杉)

小唄都都逸なんでもできて お約束だけ出来ぬ人(鬼兵隊三人)

拒む気はない一言馬鹿と 肩へ廻した手を叱る(銀時)

咲いた花なら散らねばならぬ 恨むまいぞえ小夜嵐

船頭殺すにゃ刃物はいらぬ 雨の十日も降ればよい(高杉)

猪口々々(ちょこちょこ)逢う夜をひとつにまとめ 徳利(とっくり)話がしてみたい

寝ればつんつん座れば無心 立てば後ろで舌を出す(坂本・土方)

野辺の若草 摘み捨てられて 土に思いの根を残す(土方)

不二の雪さえとけるというに 心ひとつがとけぬとは

もしも此の儘焦がれて死ねば 怖くないよに化けて出る(銀時)

表向きでは切れたと言えど 蔭でつながる蓮の糸(高杉)

思う程 思うまいかと離れて居れば 愚痴な様だが腹が立つ

たとえ姑が鬼でも蛇でも ぬしを育てた親じゃもの

あざのつくほど抓っておくれそれをのろけの種にする

思い出すよじゃ惚れよがうすい 思い出さずに忘れずに

たったひとこと言わせておくれ あとでぶつともころすとも

たったひとつの命のあかり 昏れりやあなたがつけにくる(銀時)

花は散りぎわ 男は度胸 いのち一つはすてどころ

主はいまごろ醒めてか寝てか 思いだしてか忘れてか(月詠)

古疵へ さわりたくない互いの無口 早く酔いたい久し振り(銀時)

星の数ほど男はあれど 月と見るのは主ばかり(坂本)

論はないぞえ惚れたが負けよ どんな無理でも言わしゃんせ(坂本)

あいこばかりで 勝負がつかぬ そんなふたりで いましょうか

熱いしるこに口とがらせて 吹けばそこだけ ちと凹む(松陽)

あんな女がどうしていいの おまえに似ているとこがいい

浮き名立ちゃそれもこまるし世間のひとに知らせないのも惜しい仲

浮名ばかりで奇麗でいたを 崩した今夜の酒は罪

ほとゝぎす粋な声して一足止めて手を出しゃ御前は逃げるだろう(高杉)

惚れて見やがれ金こそ無いが 他に負けない物がある(銀時)

浮世暮らしに愛想も尽きて、ぬしと二人で焼かれたい(高杉)